都市伝説:ちょっと待て
三人の大学生が、肝試しのために近所でも有名な心霊スポット「○○病院」にやってきた。
○○病院は、潰れてから随分経つ廃院で、荒れ放題になっていて、誰も近寄らない病院だった。
そのうちの一人が、ビデオカメラをもって、証拠映像として探索の記録を録った。
そして、他の二人はテレビのレポーターのように、マイクを持つ振りをしながら、のりのりで廃屋へ入っていった。
「どうも、○○です。おじゃまします」
「あまり人の出入りはないようですね。そこら中、埃だらけです」
探索の途中、レポーター役のひとりが、落ちていた古いカルテと見られる紙を拾った。
紙は黄ばみ、すっかり劣化して、ぼろぼろになっていた。
「もう帰ろうか」「そうだな」
廃墟の様相を呈している病院は撮れたものの、期待していた心霊現象はなかった。
拍子抜けした三人は、戦利品代わりにカルテを持って病院を出た。
「どうも、カルテありがとうございました。おじゃましました」
帰った三人は、さっそく部屋でさきほど録ったビデオを上映することにした。
病院の前で、マイクを構えているひとりが映し出された。
くだらない冗談を言い合いながら、病院の玄関をくぐる。
「どうも、○○です。おじゃまします」
「いらっしゃい」
見ていた三人は、凍りついた。女性の声が入り込んでいた。
「あまり人の出入りはないようですね。そこら中、埃だらけです」
「散らかっていて、申し訳ありません」
「もう帰ろうか」「そうだな」
「何のお構いもせず、すいません」
「どうも、カルテありがとうございました。おじゃましました」
「ちょっと待て」
低く、どすの聞いた声が、部屋に響きわたった。
三人は互いに顔を見合わせ、がたがたと震えた。
再生を終えたテープが、自動的に巻き戻される。傍らの電話が、突然鳴った。
三人の内の一人が、恐る恐る、受話器をとった。
「こんにちは。○○病院です。大事なカルテですので、こちらまでお戻しください。それとも、おうかがいした方がよろしいでしょうか」
これが都市伝説、「ちょっと待て」です。
いくつかバリエーションがあるようで、この病院のタイプのものは比較的新しいもののようです。
古いバージョンだと、廃病院ではなく、単なる廃墟のものが主流です。
私個人の思い出ですが、小学校の修学旅行のとき、友達にこの話をされたのを覚えています。
この都市伝説も、実際に話しながらの方が怖く感じる都市伝説のひとつですね。
特に、最後のちょっとまてのところで声を低くし、それまでは優しそうに丁寧に話すと、より効果的でしょう。