都市伝説:ストーカー
ある女性がストーカーの被害に悩まされていた。
家の前に変な男が立ち、ぼうと見上げていた、などという話を近所の人から聞くと、身が凍る思いがした。
気味は悪かったが、特に実害はなかったので、そのまま放置していた。
すると、どこからかぎつけたのか、無言電話がかかるようになった。
「もしもし?」
「…………」
「もしもし? どなたですか?」
「…………」
くぐもったような息の音だけがしばらく続き、ぷつんと切れる。
こんな無言電話が、一日に何回も、朝となく夜となく続くようになった。
我慢の限界に達した彼女は、いつものようにかかってきた無言電話に、
「いい加減にしなさい! この変態ストーカー! 卑劣で最っ低ないくじなし!」
すると、今までくぐもった息の音だけだった受話器から、
「ころしてやる」
という言葉だけが返され、電話は切れた。
彼女は、その男の反応に身の危険覚えたため、警察に相談することにした。
彼女の事情を聞いてくれたのは、運良く人の好い女性警官だったため、親身になって相談になってくれた。
そして、今度電話がかかってきたときは、逆探知を行って、相手の居場所がわかってから、彼女の携帯電話にかけるので、なるべくストーカーとの電話を切らないようにといわれた。
そして、その夜、電話がかかってきた。
しかし、相手の様子がいつもとは異なっていた。
「もしもし?」
「ふふふ……」
「もしもし?」
「ふふ……くくくくく……」
ストーカーの男は無言ではなかった。
ストーカーの男は、低くくぐもった声で、電話口で静かに笑っているのだった。
不気味な笑いに恐ろしくなった彼女は電話を切ろうとしたが、逆探知のことを思い出し、生理的な嫌悪感に耐えながら、ひたすら男の笑い声を聞いていた。
すると、彼女の携帯電話が鳴った。
警察からだ。
「逆探知の結果が出ました。今すぐ、今すぐ外に出てください! 犯人はあなたの家にいるんですよ!」
彼女は、反射的に受話器をたたきつけると、その場に立ち竦んだ。
男の笑い声は、まだ、消えていなかった……。
これが都市伝説、「ストーカー」です。
近いものでは「電気をつけなくてよかったな」や、「ベットの下の斧男」などがあります。
例が少ないということもあるのでしょうが、意外と女性版のストーカーの都市伝説というのは存在しないんですよね。
それこそカシマさんというストーカーが登場しても、おかしくない世の中になってきているような気もします。
その場合、落ちも少し女性らしい怖さが付加されたものになるのかもしれません。