番外編:デジャ・ヴ

 既視感あるいは、既視体験ともいいます。
 フランス語で「deja」は「既に」、「vu」は「見た」、つまり「既に見たもの」を意味し、初めてみたものであるにもかかわらず、以前に見たことがあるように感じる現象をいい、統計によれば約70%の人間がこのデジャ・ヴを経験したことがあるといいます。

 デジャ・ビュは、予知や前世の記憶、あるいは他人や死者の記憶との共鳴による現象であるともいわれますが、いずれも俗説であって確証はありません。心理学的にはデジャ・ヴは自らの不安や願望、あるいは指示などによって記憶を作り出してしまうことによる記憶の錯覚であるといわれています。
 また、認知神経科学によると、原因は人間の記憶のメカニズムにあるとされています。

 人間の記憶はその記憶期間によって三種類に分けられます。


 ひとつは、目に入っただけという感覚記憶。

 ふたつ目は、特定の数字の羅列や日時といったように、必要があってほんのわずかな間だけ覚えられている短期記憶。

 最後に、人の名前や掛け算の九九などのように反復を繰り返し覚えられた長期記憶。


 これらの記憶は普段、脳の側頭葉に蓄えられており人間は必要に応じてその時に見たものなどを記憶情報の中から検索、照合し、既に知っているものであるかどうかを判断しています。

 しかし、その照合の際、脳が誤作動を起こす場合があります。今見ているものが、三つの記憶野の中の過去の記憶と似ている場合、あるいはどこかに共通点がある場合、それを以前に見たものと同様であるとの判断を下し、それによって、脳自体が錯覚を起こしてしまうのです。

 その証拠に、デジャ・ヴを経験したという人の多くが、脳の発達後期とされる15歳から20歳の間に経験していて、またそれ以外の場合でも、非常に疲れているときなど、脳の働きが低下している時に経験するといわれています。

 しかし、デジャ・ヴは前世の記憶が断片的に蘇ったという考えも存在します。

 いずれにせよ、人間の脳の働きはその多くがまだ不明のままであり、どれも推論の域を出るものではない、といえるでしょう。