都市伝説:さめない酔い
ある男性会社員が、帰り際、仕事仲間との飲み会に参加した。
その日はかねてからの大仕事だった商談がようやくまとまったため、彼も仕事仲間もみな上機嫌に祝杯を掲げた。
しこたま飲んでしまった彼だが、家はそれほど遠くなく、大丈夫だろう、と運転して帰ることにした。
深夜の時間帯のため、人影はなく、通いなれた道ということもあり、彼はうとうとしてしまう。
家までもう少しというところで、一瞬だけ眠ってしまった。
一瞬、ひやりとしたが。すぐにハンドルを取って家に帰ることができた。
次の日、彼は頭を痛ませながら目を覚ました。
そして、仕事に出ようとガレージに向かった彼は信じられないものを見てしまう。
それは、自分の屋根の上で死んでいる女の子だった。
彼は自分の長い叫び声で目が覚め、飛び起きた。
気づけば、ハンドルを握りしめている。
「夢だったのか……」冷や汗を拭った彼は、嫌な予感がして車を止めた。
おそるおそる車の見上げると、自分の屋根の上には死んでいる女の子がいた。
彼は叫び、その声に目が覚めて−−。
これが都市伝説、さめない酔いです。
元々は単に女の子の死体を見つけて終わるパターンだったのでしょうが、今回紹介したのは、悪夢と酔いとをさめないものとした派生パターンです。
話自体は、自動車免許の更新の際にでもありそうな話ですが、屋根の上にずっといるというのは不気味です。
また、ずっと引きずっていた、というパターンもありましたが、実際に事件が起こったためか、あまり聞かれなくなりました。
大抵、その場合は上半身だけになっているパターンが多いようです。
都市伝説:ある光景
その夫婦の仲は、非常に悪かった。
互いが互いの欠点ばかりをあげつらい、当然ながら冷め切った間柄で、毎日けんかばかりしていた。
それでも、どうにか離婚を踏みとどまっていたのは、小さい一人息子がいたからだった。
しかし、そんな日にも、とうとう終わりが訪れる。
我慢の限界に達していた夫は、些細な口げんかをきっかけに、妻を殺してしまう。
遺体を処理して、近所には、妻は実家にかえってしまったため、連絡をとれなくなりました、と嘘をついた。
そうして、何日かが経った。
ようやく、夫は人心地が付くと同時に、不思議に思うことがあった。
息子が、さみしいなどという泣き言をいわないのだ。
それどころか、嬉しそうにしているようにさえ見えた。
夫は、息子も実は妻のことが嫌いだったのだろうか、と思い、聞いてみることにした。
「なお、最近、お母さんいないけど、さみしくないか?」
「うんさみしくないよ」
「お母さんのこと、きらいだったのか?」
「ううん。でも、お父さんとお母さんは、仲良くなったんだね」
「え?」
「だってママ、パパの背中にずっと抱きついてるんだもん」
これが都市伝説、ある光景です。
元々は、単に妻が夫に張り付いていることが息子には見えた、という都市伝説ですが、これはその派生バージョンです。
喧嘩の多い家庭で傷つくのは、やはり子どもです。
その子どもが、父母が仲良くなっているように見えた、というのがなんとも哀れみを誘い、このパターンの都市伝説も広がったのでしょう。
喧嘩のみならず虐待の多いこの世の中においては、こうした都市伝説の変化というのは、当然なのかもしれません。
都市伝説:救われない話
注:このお話はあまりにも救いようがないので、気分を害す恐れがあります。
理不尽すぎる話が苦手な方は、読まないでください。
(上の注意書きは私の判断であって、都市伝説のフリではありません。ではどうぞ)
ある幸せだった家庭で起こった、悲劇としかいいようのない、悲惨な話だ。
この日、母親は洗濯をして、旦那や子どもたちの汚れた服をせっせと干していた。
離れた部屋では小さい女の子の姉と生まれたばかりの弟が、じゃれあって遊んでいた
女の子はふと、純粋な疑問を抱いた。
男の子の股についているものが、なぜ自分にはついていないのだろう。
そんな考えが浮かび、気になって仕方がなくなった。
弟は、そんな女の子の意図などお構いなしに、女の子が動かすおもちゃに笑っている。
気になって気になって、我慢できなくなった女の子は、使い方を教えてもらったばかりのはさみで、弟のおちんちんを一息に切ってしまった。
突然、火のついたような、激しい泣き声に母親は気づいた。
慌てて部屋に駆け込み、子どもたちの様子を見て仰天した。
女の子からもぎとるようにはさみを取り上げると、救急車を呼ぶよりも、自分で運んだ方が早いと判断し、大慌てで男の子を抱きかかえて家を出た。
車に乗ると、ガレージに先頭から入っていた自動車をバックで急発進させた。
そのとき、泣きながら家の外まで付いて来ようとした女の子をひいてしまった。
これが都市伝説、救われない話です。
実はこの都市伝説の原型と思われる話は昔からある話のようで、これも負けず劣らず悲惨な話です。
この話は、救いようがないですが、救いようがないからこそ、都市伝説として語り継がれているのでしょう。
一家が突然の最悪に遭う話は他にもありますが、救われなさではかなり上位に入る話だと思います。
都市伝説「フジツボがびっしりぎっしり」
ある男性が海水浴に来ていた。
海辺を歩いているとき、フジツボがたくさんいる岩場で転んでしまった。
怪我はひざを少し切る程度の軽い症状だったので、簡単に治療を終えたあと、気にせず泳ぎにいったあと、家に帰った。
それから数週間後、男性は自分の足が痛むのを感じた。
最初はズキズキとした痛みだったが、時間が経つにつれて、我慢ができなくなるほど痛くなり、硬く腫れ上がった。
歩くと、腫れている辺りがじょりじょりと変な音までするようになってきた。
これはまずい、と思った男性は、病院に駆け込んだ。
医者は男性の腫れた足を調べるために、レントゲンで足を撮影することにした。
出来上がったレントゲン写真を見て、医者は絶句した。
なんと、男性のひざの中には、フジツボがびっしりと繁殖していたのである。
これが都市伝説「フジツボがびっしり」です。
これもピアスの穴の白い糸にならんで、人体にまつわる都市伝説の中では、有名なものと思います。
フジツボの強い繁殖力と、足にびっしりあるという生理的な気持ちが悪さが、この都市伝説を広める原因となったのでしょう。
他のバリエーションでは、切開してフジツボがびっしりつまっているのを見た、というものもあります。
ゴキブリにせよフジツボにせよ、びっしりあるというのは、背筋がぞくぞくしてきますね。
都市伝説:窓に付く女
ある深夜。
A子さんは異様な物音を聞いて目を覚ました。
何かを引きずっているような音が、窓の外から聞こえていた。
道に面している家ではあったが、深夜ともなると人通りはない筈だった。
両親が旅行に出かけてしまい、ひとりだった彼女は、その音に耳を傾けた。
しばらくすると、音が止まった。
次の瞬間、カーテンを引いてある窓が、「ドンッ」と叩かれた。
A子さんの心臓は、胸から飛び出さんばかりに、バクバクと高鳴った。
バン……、バン……、力ない音が、何度も聞こえる。
彼女は勇気を振り絞り、窓の外へと近寄っていった。
「誰? 誰かいるの?」
窓の外から返事はない。
力なく、窓を叩く音が聞こえるだけだ。
「い……いたずらだったらやめてください!」
深呼吸をして、呼吸を整えながら、彼女はきっぱりとした口調で言った。
それでも返事はなく、カーテンの裏からは、ゆっくりとしたテンポで窓を叩く音が聞こえるだけであった。
彼女は覚悟を決めた。
カーテンの端に手をかけると、目つぶって一気に開いた。
そして、ゆっくりと開いた彼女の目に飛び込んできたのは、顔面血だらけの、薄笑いを浮かべた髪の長い女の顔だった。
「ぎゃあああああああ」
彼女は叫び声を上げると、カーテンを閉め、着のみ着のまま、慌てて家を飛び出した。
逃げるようにして、近所の友人の家に入った彼女は、その夜起きた出来事を友人に話した。
霊感の強い友人は彼女の話を最後まで聞くと引き出しからお守りを取り出し、それを彼女の首にかけた。
ようやく安心した彼女は、友人の家で朝までゆっくりと眠った。
そして、何事もなく朝になった。
友人は心配してくれたが、彼女は「もう朝だし、お守りがあるから大丈夫」とひとりで帰ることにした。
彼女が家の近くまでくると、周りにはかなりの数のパトカーがとまっていた。
何が起きたのだろう、と思った彼女は、近くに立っていた主婦に聞いてみた。
「何かあったんですか?」
主婦は答えた。
「昨夜、通り魔に襲われた女の人がここまで逃げて来たんだけど、そこの家の所まで来て息絶えてしまったんだって。かわいそうに」
主婦の指差した先には、彼女の家があった。
これが都市伝説「窓の女」です。
有名な怪談話でいうと、謎のペンダントを引っ越した先でみつけて、前の自殺した持ち主が取り返してくる、という話がありますが、それだと単なる怪談話になってしまいます。
この窓の女という話は、最後のひねりといい、展開といい、都市伝説らしい都市伝説といえるのではないでしょうか。
実はそれは変わり果てた彼女の母親だった、というパターンもあるにはあるようですが、少しくどいのでそこまで広まってはいないようです。
都市伝説:カーギロチン
老人が孫をのせてドライブを楽しんでいた。
車は買ったばかりのもので、老人もまだ細かい操作を覚えているわけではなかった。
孫は窓を開けて、入ってくる風を楽しんでいる。
それがいけなかった。
窓の首にさげられていた、携帯のストラップが窓を引き上げるスイッチに引っかかってしまい、孫の首を締め上げたのだ。
あわてた老人は、何とか孫を助けようとしたが操作方法がよくわからない。
後部座席から、絶望的な音が響いてきた。
これが都市伝説、カーギロチンです。
特に現在はチャイルドシードの着用が義務付けられていますし、安全装置も付いているため、まず起きない事故であるといえます。
挟まるという現象が入る都市伝説は、悲しい結末であることが多いですね。
都市伝説:シリコンが爆発
彼女は顔立ちのよい美人だったが、胸が小さくそれがコンプレックスだったのだ。
手術のあと、担当の医師からは、
「入れたばかりのシリコンが安定するまで、しばらくの間絶対に飛行機には乗らないでください」
との注意を受けた。
それから数週間後、大事な出張のため、飛行機にどうしても乗らなくてはいけなくなった。
まだ医者のOKサインは出ていなかったが、大丈夫だろうと、彼女は医師の忠告を無視して飛行機に乗ることにした。
空港でも機内でも美人の上グラマーになった彼女は、人々の視線を一身に集めた。
飛行機が離陸し、高度がどんどん上がっていくにつれ、彼女の身体に異変が起きた。
手術をした胸に違和感があり、苦しくなってきたのだ。
飛行機は、更に高度を上げていく。
胸の違和感はさらに強まり、ぼこぼこと音を立てて、うごめき出した。
そして、彼女の胸が大きく膨らんだかと思うと、大きい爆発音とともにはじけた。
彼女は一命をとりとめたが、バストは手術前よりも小さくなってしまった。
飛行機の気圧の変化で、胸のシリコンが膨張してしまったのが、原因ということである。
これが都市伝説、「シリコンが爆発」です。
シリコンが爆発した、という事件はテレビでも流れたこともあり、結構有名な話で、最近ではシリコンを用いた豊胸手術というのは禁止されています。
シリコンは人工高分子化合物で、ケイ素を構造に含む樹脂というのが一般的な見解でしょう。
ほぼ絶縁体ではありますが、強酸には弱いという性質があります。